Q-dent - クオリティの高い歯科診療とメインテナンスの提供のために Japan SurgiTel Users Group

歯科衛生士は、“人が生きる”に貢献できる職業です! 森田デンタルクリニック 森田 久美子さん

深いブルーの海と、美しい島々に囲まれた愛媛県伯方島。森田久美子さんがこの地に降り立ったのは、歯科衛生士になって間もない22歳のときでした。
「結婚を機に、主人の実家があるこちらへ越してきたんです。最初は衝撃でしたね。コンビニへ行くにも車で10分はかかるし、欲しいものがあってもすぐには手に入りません。特に歯科に関しては、何十年も前からまったく情報が更新されていないような感じだったんです!」
高齢者が多いため〝歯科医院は治療だけするところ〟という考えが定着しており、歯間ブラシすらほぼ100%の人が知らない状態……。まずは、むし歯や歯周病は予防できると知ってもらうことが当面の課題だったといいます。
それから13年が経ち、現在森田さんが受け持っているメインテナンス患者さんはおよそ500名。いまや島の人にとって、森田さんはなくてはならない存在です。患者さんとの距離が縮まるきっかけは何だったのか、森田さんの中でどんな心境の変化があったのか。そこには深い、人と人とのつながりがありました。

医療人としての、本当の姿を見た!

ここで働き始めた最初の頃は、島の方たちから「看護師さん」って呼ばれていました(笑)。当時は今ほど歯科のことがテレビで注目を浴びていなかったし、島だと入ってくる情報も限られているんですよ。予防のことも歯科衛生士のことも、ほとんど知られていないのが現状。「むし歯や歯周病は防げるんですよ」と話しても、聞く耳すら持ってもらえませんでしたね。この先どうなるんだろうって、不安でいっぱいでした。
ところが、ある人と出会ってから私の中で何かが変わったんです。それは、島のお医者さんたち。開業医の先生って、何よりも患者さんのことを第一優先で考えているんですよ。たとえば長期連休に入るときは、「来週まで病院はお休みになっちゃうけど大丈夫ですか?」と必ず患者さんたちに電話する。それでも心配な方がいたら、祝祭日でも構わず病院を開けるんですよね。患者さんに必要とされるなら、休日なんて関係ないんです。
誰かが亡くなったときもそうです。どんなに朝早くても夜遅くても、すぐに駆けつけて看取りに行かれます。その後もご家族のフォローをしたり、しばらくしてからまた様子を見に行ったり。常に島の人たちのために動いています。
そんな先生たちの姿を見て、医療人とはどうあるべきなのかを学びました。「私はこういうことがしたいのに聞いてもらえない……」なんて自己満足の世界で仕事をしていた自分が、なんて情けないんだろうと思いましたね。

“人が生きる”に一番関われる立場

その気づきがあってから、私も患者さんとの接し方が変わったと思います。ここへ来る前は東京のビジネス街にある歯科医院で働いていたのですが、ビジネスマンの方が相手だと診療後や休日はまったく接点がないじゃないですか。でも、島だと何かしら患者さんとのつながりがあるんですよ。ご近所さんだったり、よく行く魚屋さんのご主人だったり、何かの会合でご一緒することがあったり。生活背景や家族構成、今どんな状況に置かれているのかというのが、自然と見えてくるんです。
そうなると、その方のことをもっとよく考えるようになりますよね。お口の中はもちろんですが、「体の具合はどうかな」とか「旦那さんが亡くなってからしばらく経つけど元気になったかな」とか。その人自身に目が向いて、話しかける言葉も変わっていきます。そのうち「あなたは看護師さんじゃないの?」と聞いてくれるようになったり、こちらもお口の健康がいかに大事なのかを伝えることができるようになりましたね。
少しずつ、距離が縮まっていきました。
それに、歯科衛生士は医療職種のなかではある意味特殊です。病気のときだけじゃなくて、元気な姿も近くで拝見することができます。体調がすぐれないときの落ち込み具合がわかるし、口腔内の変化も敏感に感じ取れる。患者さんが生きている時間と長く関われる分、誰よりも寄り添える立場なんです。“人が生きる”ということに一番貢献できる職種だからこそ、都会とか田舎とか関係なく患者さんそのものを診ることが大事なんだと気づかされました。

歯科衛生士として、頼られるということ

私の向き合い方が変わってから、患者さんの信頼も得られるようになりました。今はちゃんと、「歯科衛生士さん」って呼んでもらえますからね(笑)。おかげで、患者さんがご紹介でいらっしゃるケースも増えたんですよ。「メインテナンスを受けていたらお口の中が安定した」「前は食べられなかったものが食べられるようになった」と実感できるからかな。歯科衛生士と関わることに、価値を感じてくださっているのだと思います。
1人印象的だったのは50代の男性。彼のお母さまが、我が家のお隣さんなんです。数年前に「80代の母親が心配だから」と地元へ帰って来られてから、メインテナンスに通ってくださいました。
ところが1年くらい経ったとき、突然体調を崩されて。病院で調べたところ、多発性のガンを患っているとのことでした。メインテナンスにも来られなくなり、とうとう入院されてしまって……。しばらくすると、お母さまが訪ねて来てくださったんです。
「昨日看護師さんがお口のケアをしてくれようとしたら、息子が『口の中は森田さんじゃなきゃダメだ』って言うんです。歯ブラシでも歯磨き粉でもなんでもいいから、アドバイスくれませんか?」
それで、歯ブラシやデンタルフロスを用意して、「きっと口の中が乾燥していると思うからこういうふうにケアしてください」と看護師さんとご本人宛のお手紙も付けてお渡ししました。それから数ヶ月後に亡くなってしまわれたのですが、もう涙が止まらなかったです。入院されてしまった以上、私としては何もできないと思っていましたから。それでも患者さんは、最後まで私を歯科衛生士として頼ってくださったんですよね。忘れることのできない体験です。

この仕事を一生続ける。直感を信じて

私にとって患者さんは、「師」。それに尽きます。医療人としてどうあるべきなのか、自分は何のために存在しているのかを教えてくれる恩師なんです。
まだ若かった頃は、「こんな歯科衛生士になりたいんだ!」という想いでいっぱいだったこともありました。とにかく本を読んでセミナーに出て、知識やスキルを増やすことに夢中になっていた時期もあります。でもそれが、自分のためなのか、ドクターや周りの人に認めてもらうためなのか、患者さんの人生にちゃんと貢献するためなのか。本来の目的を見失っていないかどうか、一瞬立ち止まることができたのは島の方たちがいてくださったからこそです。
実は私、初めてこの仕事に出会ったのは中学生のときだったんですよ。教室の隅に専門学校を案内している本が置いてあって、ぱらっとめくって目に入ったのが歯科衛生士学校のページ。「私この仕事を一生やるんだろうなぁ」となんとなく直感が働いたんですが、あれは本物だったかもしれないですね(笑)。
これからもより細やかな心で、患者さんと向き合っていきたいと思います。

森田デンタルクリニック 愛媛県今治市伯方町木浦甲1243-1
次の記事を読む

ページ上部へ戻る